「何から手をつければいいか、分からない…」 「教授に『テーマを決めてこい』と言われたけど、見当もつかない…」
研究テーマが決まらず、焦りや不安で自分を責めていませんか? しかし、安心してください。
テーマが決まらないのは、あなたのやる気がないからではありません。
ただ、「テーマを見いだすための“技術”」を知らないだけなのです。
この記事は、そんなあなたのための「研究テーマ発掘マニュアル」です。
先行研究の具体的な読み解き方から、教授を「最強の味方」に変える相談術まで、「これだ!」と思えるテーマを発見するための思考法と行動を、徹底的に解説します。
この記事を読み終える頃には、漠然とした不安が「自分にもできそうだ」という具体的な自信に変わっているはずです。
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はじめに:「テーマが決まらない…」と焦る前に知ってほしいこと

研究テーマが決まらない。
その事実に焦りを感じ、「自分は研究に向いていないんじゃないか」「やる気がない学生だと思われているかも…」と、自分自身を責めてしまっていませんか?
もしそうなら、まずはその手を止めて、深呼吸してください。
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決まらないのは、あなたのせいではない。ただ「やり方」を知らないだけ
私たちが断言します。
研究テーマがすぐに見つからないのは、あなたの能力ややる気の問題では決してありません。
それは、サッカーのルールを知らずに「うまくドリブルできない」と悩んでいるのと同じです。
あなたはただ、研究テーマという「おもしろい問い」を見いだすための“技術”や“型”を、まだ学んでいないだけなのです。
優れた研究テーマは、何もないところから天啓のように降ってくるものではありません。
それは、先人たちの知見を正しく読み解き、指導教員と正しく対話する、技術的なプロセスによって発見されるものです。
この記事では、そのための具体的な技術を、ステップバイステップで解説します。
あなたのパターンはどれ?テーマ決めの3つの「難易度」
まず、あなたが今置かれている状況を客観的に把握しましょう。
研究テーマの決め方には、大きく分けて3つのパターン(難易度)があります。
- 難易度【低】:教授からテーマを与えられる
研究室の大きな研究プロジェクトの一部として、具体的なテーマ(「〇〇の××を明らかにする」)が与えられるパターンです。「何をやるか」で悩む必要はありませんが、「なぜ、これをやるのか」という目的意識を自分で見いだす必要があります。
- 難易度【中】:大枠が決まっている
「〇〇(という物質)について、何かおもしろいこと見つけてみて」というように、大まかな方向性だけが示されるパターンです。自由度と拘束のバランスが良く、最も一般的なケースかもしれません。
- 難易度【高】:完全な自由。「好きに決めていいよ」
一見、恵まれているように聞こえますが、これは最も難易度の高いモードです。道なき道に、自分で最初の杭を打たなければなりません。
この記事は、あなたがこの3つのどのパターンであっても、「自分だけの問い」を見いだし、それを価値ある研究テーマへと育て上げるための思考法を解説していきます。
まずは、王道であり最も重要なステップから始めましょう。
【ステップ1:王道】先行研究の“海”から「未解決の問い」を見いだす技術

研究室に配属されると、まず間違いなく「先行研究を読め」と言われます。
しかし、多くの教授や先輩は、「どう読めばテーマが見つかるのか」という、最も重要な“技術”までは教えてくれません。
これは、羅針盤(らしんばん)も地図もないまま広大な海に放り出され、「宝を探せ」と言われているようなものです。
なぜ「先行研究を読め」とだけ言われても、テーマが見つからないのか
論文の数は膨大です。
どこから手をつけ、何を基準に「おもしろい」と判断すればいいのか、分かるはずがありません。
その結果、「読んでも読んでもテーマが決まらない…」という負のループにはまってしまうのです。
大事なのは、やみくもに読むことではありません。
「テーマを見いだすため」という明確な目的意識を持って、論文の“特定の場所”を戦略的に読み解く「技術」です。
「総説論文(レビュー)」で、分野の「地図」と「空白地帯」を把握する
いきなり最先端の個別の論文(原著論文)を読むのは、お勧めしません。
まずは、「総説論文(レビュー論文)」から読み始めましょう。
総説論文とは、ある特定の分野について、これまでの研究の歴史や重要な発見、そして「今、何がどこまで分かっていて、何が分かっていないのか」を専門家がまとめた、最高の「地図」です。
この地図を手に入れることで、以下の2点が明確になります。
- 分野の全体像(=既知): あなたの研究分野がどのように発展してきたのか、基本的な知識や常識は何か。
- 今後の課題(=未知): 専門家が「この分野は、ここがまだ解明されていない」「次はこのアプローチが必要だ」と考えている、研究の「空白地帯」はどこか。
多くの場合、この「空白地帯」にこそ、あなたが取り組むべきテーマのヒントが隠されています。
「緒言」と「結論(今後の課題)」だけを100本ノックする
総説論文で「地図」を手に入れたら、次は個別の原著論文を読み、具体的な「宝のありか」を探します。
しかし、この段階でも、論文を最初から最後まで丁寧に読む必要は一切ありません。
時間は有限です。あなたの目的は「テーマの種」を見つけることです。
そのために、論文の「緒言(Introduction)」と「結論(Conclusion / Discussionの最後)」だけを、ひたすら読みまくるのです。
この2つのセクションに集中するのには、明確な理由があります。
- 緒言(Introduction)を読む理由: ここには、「なぜ、著者はこの研究をやる必要があったのか?」という“問い(リサーチギャップ)”が書かれています。先行研究の問題点を挙げ、「だから、ここがまだ分かっていない」と宣言する部分です。ここを読むことで、「問い」の立て方を学ぶことができます。
- 結論(Conclusion / 今後の課題)を読む理由: ここには、「この研究で、何がどこまで分かり、何が“次”の課題なのか」が書かれています。著者自身が「今後は〇〇の検討が必要だ」と、次なる研究テーマのヒントを親切にも提示してくれていることが多いのです。
「実験方法」や「結果」は、テーマが決まってから読めば十分です。
「この論文の“問い”は何か?」 「この論文が提示する“次の課題”は何か?」
この視点だけで、まずは100本の論文の「緒言」と「結論」をノックするように読みあさりましょう。
その膨大なインプットの中に、必ずあなたの琴線に触れる「テーマの種」が見つかります。
【ステップ2:必須】指導教員を「最強の味方」に変える相談術

先行研究の海で「テーマの種」をいくつか見つけたら、次なる、そして最も重要なステップは「指導教員への相談」です。
しかし、多くの学生がここでつまずきます。
「こんなことを聞いて、あきれられないだろうか」 「『まだ決まらないのか』と問い詰められそうで怖い」 そう感じてしまい、相談のタイミングを逃し、一人で抱え込んでしまうのです。
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「相談しづらい…」のワナ。教授が本当に求めていること
この「相談しづらい」という感情こそが、テーマ決めにおける最大のワナです。
yahoo知恵袋にも「問い詰められ、なかなか指導教員に相談もしづらいです」という悲痛な叫びがありました。
ですが、まず理解してほしいことがあります。
あなたの指導教員は、完璧な研究テーマを持ってくることなど、一切期待していません。
教授が本当に見たいのは、あなたの「完成品」ではありません。
彼らが見たいのは、あなたが「どれだけ考えたか」という“思考のプロセス”と、「前に進もうとしている」という“姿勢”です。
何も相談せずに時間を無駄にすることこそが、指導教員が最も恐れる事態です。
教授は、あなたを詰問したいのではなく、あなたのアイデアの原石を一緒に磨き上げたい「共同研究者」なのです。
「手ぶら」で行くな!“たたき台”として持っていくべき3点セット
ただし、教授を「最強の味方」に変えるには、一つだけ守るべきルールがあります。
それは、「手ぶら」で相談に行かないことです。
「何も分かりません」「テーマが決まりません」 これでは、教授も「何をどう助ければいいか分からない」と困ってしまいます。
必要なのは、完璧な企画書ではありません。 「こんなことを考えてみました」と提示できる、稚拙でも具体的な「たたき台」です。
具体的には、以下の3点セットを用意して相談に臨みましょう。
- 読んだ先行研究のリスト
ステップ1で読んだ論文のリストです。「自分はこれだけのインプットをした」という、具体的な行動の証拠になります。
- 2〜3個の「疑問点」や「おもしろいと感じた点」
「〇〇論文ではAと主張しているが、△△論文ではBと主張していて、なぜ違うのか疑問に思った」「この実験の〇〇という部分が、技術的におもしろいと感じた」など、あなたの頭が動いた痕跡を示します。
- 「〇〇はできませんか?」という、稚拙な“仮説”
これが最も重要です。「〇〇論文ではAまでしか試していないが、もしBを試したらどうなるだろうか?」「この研究室の機材で、〇〇は測定できないだろうか?」といった、どんなに荒削りでも構わない「あなた自身の問い」です。
この3点セットは、教授にとって、あなたの思考を診断し、適切な処方箋(アドバイス)を出すための、最高の「カルテ」となります。
教授の「過去の論文」と「専門分野」から、“刺さる”質問を用意する方法
さらに一歩進んだ技術として、教授の「専門性」に意図的に寄り添う方法があります。
それは、指導教員自身の「過去の論文」を1〜2本でいいので読んでおくことです。
研究者は、自分の専門分野に強い誇りと情熱を持っています。
あなたがその専門性に興味を示すことは、何よりの敬意の表明になります。
その上で、先ほどの「たたき台」と、教授の専門性をつなぐ質問を用意してみましょう。
【質問の例文】
「先生の〇〇に関する論文を拝読しました。そこで使われていた△△という分析技術に興味を持ったのですが、この技術は、私が先行研究で読んだ××という現象の解明にも応用できる可能性はありますでしょうか?」
このような質問をされた教授は、あなたのことを「指導すべき学生」から、「対話できる(未来の)研究者」として認識するはずです。
単なる「報告」を、二人で未来を議論する「科学的なディスカッション」に変えること。
それこそが、教授を「最強の味方」に変える、最も効果的な相談術です。
【ステップ3:検証】そのテーマで、本当に卒業できる?3つの最終チェック

先行研究と指導教員とのディスカッションを経て、いよいよあなたの研究テーマが輪郭を現し始めました。
しかし、そのテーマに飛びつく前に、一度立ち止まってください。
そのテーマは、あなたが「卒業」というゴールにたどり着くための、本当に適切な“船”でしょうか?
ここで冷静に3つの視点から検証することが、未来のあなたが「こんなはずじゃなかった」と後悔するのを防ぎます。
チェック1:新規性(新しいか?)|巨人の肩に「1mm」だけ付け加える発想法
「新規性」と聞くと、「世界初の発見」や「誰も解決できなかった問題の解決」といった、壮大なものを想像してしまうかもしれません。
しかし、学部生や修士学生に求められる新規性とは、そんな大げさなものでは全くありません。
科学の発展とは、先人たちが積み上げた「巨人の肩」の上に、ほんの「1mm」だけ新しい知見を付け加えることの連続です。
あなたの役割は、その「1mm」を担うことです。
- 先行研究のAとBという手法を、新しく“つなげて”みた
- これまで〇〇でしか使われていなかった分析方法を、△△に“応用”してみた
- 既存の実験の“条件(温度、圧力など)”を少し変えたら、どうなるか試してみた
この程度の「小さなオリジナリティ」で、新規性としては十分すぎるほどです。
壮大なテーマを掲げて自滅するのではなく、確実に達成可能な「1mm」の進歩を見いだしましょう。
チェック2:実現可能性(できるか?):研究室の設備と、卒業までの時間で判断する
どんなに革新的でおもしろいテーマでも、それを卒業までに達成できなければ、ただの“空想”で終わってしまいます。
必ず、以下の2つのリソース(資源)が足りているかを確認してください。
- 研究室の設備(モノ): その研究テーマを遂行するために必要な実験装置や、分析機器は、あなたの研究室にそろっていますか?あるいは、共同研究先などで借りるあてはありますか?
- 卒業までの時間(トキ): 学部生なら約1年、修士学生なら約2年という「納期」は絶対です。その限られた期間で、データ収集から論文執筆までを完了できる、現実的なスケジュールが組めるでしょうか?
特に、新しい実験系をゼロから立ち上げる必要があるテーマは、予想の3倍時間がかかると見積もっておくべきです。
この「実現可能性」の判断こそ、あなたの指導教員が最も的確なアドバイスをくれる部分です。
必ず確認しましょう。
チェック3:興味(やりたいか?)|“おもしろくない”テーマを“おもしろく”する方法
最後の、しかし最も重要なチェック項目が、あなた自身の「興味」です。
これから1年、2年と続く、つらく地味な実験や考察を支える最大のガソリンは、あなたの「知りたい」という好奇心です。
とはいえ、「教授に与えられたテーマで、どうしても興味が持てない…」というケースも多いでしょう。
その場合は、テーマ自体を変えようとする前に、そのテーマを“おもしろくする”ための「視点の転換」を試みてください。
- 「なぜ?」を5回繰り返す: その研究が、社会のどんな問題につながっているのか?なぜ、教授はその研究を重要だと考えているのか?背景を深く掘ることで、自分が共感できる「意義」が見いだせるかもしれません。
- 「技術」にフォーカスする: 研究対象(物質や現象)に興味が持てなくても、「最先端の分析機器を使えるようになる」「この実験技術をマスターする」という“スキルの習得”自体を目標に据えるのも一つの手です。その技術は、将来のあなたの強力な武器になります。
その研究テーマのどこか一点でも、あなたが「これは自分のためになる」と思える“おもしろさ”を見いだすこと。
それが、長い研究生活を走り抜くための、大切な“お守り”となります。
【緊急対処】「研究テーマが決まらない…」お悩み別Q&A

ここまでは、研究テーマを見いだすための王道的なステップを解説してきました。
しかし、現実には「そうは言っても、うまくいかない…」という、個別の具体的な悩みが必ず出てくるものです。
ここでは、多くの学生が抱える「お悩み」に、処方箋としてQ&A形式で答えていきます。
Q1. 与えられたテーマに、どうしても興味が持てません…
これは、研究室生活で最もつらい状況の一つです。
しかし、指導教員はあなたを苦しめるために、そのテーマを与えたわけではありません。
必ず、何らかの学術的な「意義」や「必要性」があるはずです。
まずは、そのテーマの「おもしろさ」を、あなたがまだ理解できていないだけかもしれません。
ステップ3で解説したように、「なぜ?」を5回繰り返して、その研究の背景や社会的な意義を深く掘り下げてみてください。
それでも興味が持てない場合は、そのテーマの「一部」だけでも、あなたの興味に引き寄せることができないか考えてみましょう。
「手法」に興味を持つ、「データ分析」のスキル習得を目標にするなど、視点を変えることで、モチベーションの糸口が見つかることがあります。
Q2. 自分の研究テーマが「おもしろくない」「しょぼい」と感じてしまいます…
隣の芝は青く見えるものです。 他の学生のテーマが、華やかで「おもしろそう」に見えてしまうのは、よくあることです。
しかし、研究の価値は、テーマの「派手さ」で決まるのでは決してありません。
どんなに地味に見えるテーマでも、論理的な穴がなく、緻密なデータに裏付けられた研究は、専門家から見れば「素晴らしい研究」です。
逆に、どんなに派手なテーマでも、検証がずさんで論理が破綻していれば、それは「しょぼい研究」と評価されます。
あなたのテーマを「おもしろく」するのも「しょぼく」するのも、これからのあなた自身の取り組み方次第です。胸を張りましょう。
Q3. 途中でテーマを変更することは可能ですか?
結論から言えば「可能」です。
研究を進める中で、「これはうまくいかない」と判断したり、もっとおもしろそうな別の問いを見いだしたりすることは、科学の発展においてごく自然なことです。
ただし、それには「条件」があります。
それは、「なぜ変更したいのか」という論理的な理由を、指導教員に明確に説明できることです。
「飽きたから」「つらいから」といった感情的な理由だけでは、変更は認められにくいでしょう。
「〇〇という先行研究の壁に突き当たり、現在のテーマでは実現可能性が低いと判断した」「実験の過程で△△という予期せぬ結果が得られ、こちらを深掘りする方が、より学術的な価値が高いと考えた」 このように、論理と証拠を持って指導教員に相談することが、円満なテーマ変更のための必須条件です。
Q4. 良いテーマすぎて、他の人と被るのが怖いです…
「このアイデア、もう誰かがやっているのでは?」 この不安は、あなたのテーマが「良いテーマ」である証拠です。
本当に価値のある問いは、世界中のライバルたちも同時に考えている可能性があります。
ここで重要なのは、完璧な独自性を追い求めて立ち止まらないことです。
もし似たような研究が先に見つかったとしても、落ち込む必要はありません。その先行研究の「限界点」や「使われていない手法」を見つけ、あなたの研究に「小さなオリジナリティ(1mmの新規性)」を加えれば、それはもう立派なあなたの研究テーマです。
恐れずに、まずは第一歩を踏み出しましょう。
まとめ:研究テーマは「才能」ではなく「技術」で見いだすもの

今回は、理系学生が最初につまずく「研究テーマの決め方」を、具体的な“技術”として徹底解説しました。
この記事で、あなたは以下の「武器」を手に入れました。
- テーマが決まらないのは、あなたのせいではないこと
- 研究テーマは「問い」を見いだす技術で発見できること
- 先行研究は「緒言」と「結論」で“次の課題”を探すこと
- 指導教員は「たたき台」を持って相談に行く最強の味方であること
- 「新規性」「実現可能性」「興味」の3点でテーマを検証すること
このプロセスで培われる「課題発見能力」や「情報分析能力」は、あなたの研究生活はもちろん、その先のキャリアを考える「就活・キャリア編」でも最強の武器となります。
もう、漠然とした不安に悩む必要はありません。
さあ、あなただけの「問い」を見いだす、知的な冒険を始めましょう。
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